戦後雑誌とか絵本とか

世田谷文学館で開催されている堀内誠一展について以前エントリをメモしていましたが、どうもまともに文章を書けなくて書き残したことがありました。
戦後の雑誌を考える上で堀内誠一の存在は極めて重要だと言えます。独特のエディトリアル・デザインは日本の雑誌デザインの歴史の集大成として見ることもできるでしょう。これはWebデザインが現在持っているさまざまな制約を考えると大いなる豊かさと余裕をたたえています。
雑誌においては名編集長の存在よりもデザインが重要とすら思います(優れたデザインを採り入れるのが名編集者と言うべきでしょうか)。日本の雑誌の場合、右から開く雑誌でも読んでみると縦書きと横書きが併用されていることが予想以上に多いのですが、横書きを使う広告が多いことが一つの原因ではないかと思います。雑誌を読む視線はかなり複雑な動きになります。
横尾忠則を表紙に起用した頃の少年マガジンは漫画の表現も実験が多くみられたのではないかと思います。少年バカボンは有名ですが、今月の初めのほうで川崎市民ミュージアムさいとうたかを氏の講演を見に行ったときに「無用の介」を思い出して、子供のころ読んだマガジンでちょっと画面の実験めいたことをしていたような記憶が浮かんできました(今日も某所でさいとう先生の講演があったのですが聴講は断念しました)。なお、川崎市民ミュージアムでは「サンデー・マガジンのDNA -週刊少年漫画誌の50年-」展の開催中です。
ちょっと話がそれますが、日本の本といえば、ペーパーバックが少なく文庫や新書にもカバーがかかっているのは興味深いことです。マンガのコミックスは雑誌扱いでしたが(今もそうなのか調べるのをはしょっています)、これもカバーがついています。ベンヤミンの用いたアウラの概念はあくまでもオリジナルとコピーの区別を示すものですが、複製作品にとってパッケージが一種のアウラのようなものをまとわせている時期があったと思います。これがいま失われてきているのだとすれば、美術そのものを知る手掛かりも失われてきているんじゃないかという気もしてきます。


堀内氏の仕事として児童絵本の仕事は大きな位置を占めていますが、絵本に造詣が深く、絵本を紹介する本に数多く携わっています。
特に福音館書店から発行された「絵本の世界 110人のイラストレーター」は絵本の歴史を知る上での基本文献といってもいいでしょう。

絵本の世界 110人のイラストレーター 第1集

絵本の世界 110人のイラストレーター 第1集

第1集で紹介されている「ジャンヌ・ダルク」はたしか堀内氏が世界で最も美しい絵本と呼んだものではなかったかと思いますが、記憶違いかもしれません。作者は堀内氏による表記ではモーリス・ブーテ=ド=モンヴェル、モンベルと表記されている場合も多いようです。フランスのマンガ(BD)にも大きな影響を与えているのではないでしょうか。

まとまりなくいろいろな話題を中途半端にメモしましたが、今日はこのへんで。