万博公園で何が起こっているのか

大阪府、万博公園を府営化へ 「財政負担なし」条件に - 47News
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060201000375.html

大阪府:万博公園、府営に 記念機構廃止容認 土地活用へ
http://mainichi.jp/kansai/news/20090602ddn001010004000c.html

政府は07年、機構の廃止を閣議決定。08年9月に懇談会を設置したが、現在の運営形態を残すよう求める意見も強かった。一方、園内の遊園地「エキスポランド」は07年のジェットコースター死傷事故で閉園。跡地を含む公園内にJリーグ・ガンバ大阪の競技場や映画系テーマパークの建設案が浮上したが、具体化していない。

 府は現状では、土地の活用が進まないと判断、廃止受け入れを決めた。

不透明な経緯をたどり今年度の廃止が採決された国際児童文学館の問題や、寄贈されたまま万博公園内に置かれていた産業遺産資料の大半が今年の3月に廃棄処分にされた事件は、エキスポランドの閉鎖と並んで万博公園という場所で起こっています。
その万博公園が府営化されるとのことですが、これはどういう意味を持つのでしょうか。
記事にもあるように、政府は2007年に独立行政法人日本万国博覧会記念機構の廃止を決めております。この閣議決定には大阪府の合意が必要であるという前提があったとのことですが、大阪府が合意をしていない時点で廃止を決定するというのが私にはよくわかりません。

そしてこの度大阪府は万博公園の府営化を決めました。これもどのような経緯があって決まったのかが少なくとも私には見えていません。

このよくわからない一連の動きについては、日経が関西情報で予備知識を与えてくれています。

万博記念公園を世界遺産に・番外編」万博記念機構の廃止に反対する (08/02/29)
http://kansai-concierge.nikkei.co.jp/kansai-alacarte/detail.asp?wrt_cd=6798

各省庁の抵抗で結局、昨年末に廃止が閣議決定されたのは万博記念機構などわずかに3法人。政府からの財政支出の規模が大きいため注目されていた都市再生機構住宅金融支援機構などについては、結論が先送りされた。

これについては「なぜ万博記念機構が、数少ない廃止対象の1つに挙げられたのか」という不満が、閣議決定の前から地元吹田市などに渦巻いていた。万博記念機構は2006年度の決算でも2億5000万円あまりの経常利益を上げるなど収支は黒字。政府からの助成金も一切受け取っておらず、廃止したところで、国にとっての目に見える合理化効果はほとんどない。「行政改革を着実に進めているというポーズをとるために、手のつけやすいところが狙われた」というわけだ。

万博記念機構は黒字にもかかわらず大阪府の合意を前提として廃止となったというのです。この理由として考えられるのは行政改革のポーズを見せるというほかには万博公園の再開発としか私には考えられないのですが、ほかに何か理由があるでしょうか。ちょうど鳩山総務相の辞任が問題になっていますが、この機会に考えてみていただきたいと思います。

大阪府の「財政負担なし」が条件となってはいますが、万博記念機構が黒字なのであれば大阪府営にする必要もそもそもなかったのではないでしょうか。大阪府が財政負担なしという優遇を得られているのはどういうわけなのでしょうか。ニュースにも土地活用と書かれています。ところが構想として出てくるのはアミューズメントパークとかサッカースタジアムみたいなものぐらいで、万博記念機構を廃止してまで公園を有効活用すると言うならばいまの時点でもっと具体案が出ていていいはずなのではないでしょうか。この場あたり的としか思えない経緯はいまの日本の機能不全を象徴していると思います。

問題なのはこのような混乱した状況を、リーダーのリーダーシップの欠如という形で問題化するマスコミにもあります。問題は例えば自民党という組織の機能不全のように、システムが機能不全を起こしていることであるのに、それを指導者のリーダーシップにすり替えているのではないでしょうか。方向が正しいかどうかを検証するのはトップ一人で行うべきことではありません。
私は国際児童文学館の問題に関しては、橋本府知事は単に館の意義を理解していないだけでなく、その廃止までの過程を極めて不透明なまま進めたことに非常な不快感を抱いています。府知事が支持される理由は小泉純一郎前首相が行った「わかりやすい行政改革」とやらをそのまま継承しているからでしょう。

国際児童文学館訴訟に関する橋下知事インタビュー
http://eisuke68.blog.ocn.ne.jp/suita/2009/05/post_e478.html

ハッキリ言えば今の組織がダメだということ。だから今の組織をゼロにして、組織改変ということなので、うまく伝わっていないことが残念。

うまく伝わっていないのではなくて、今の組織の何がダメなのかを橋下知事は明確に説明していないから納得するも何もないということです。

念のため大阪府のページにある大阪府立国際児童文学館条例を再録します。
http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/ak20110111.html

大阪府立国際児童文学館条例

(設置)

第一条 児童文学等の振興を図り、もって児童の健全な育成に資するとともに、児童文学等を通じての国際交流に寄与するため、大阪府立国際児童文学館(以下「児童文学館」という。)を吹田市千里万博公園に設置する。

(平一七条例一四〇・一部改正)

(事業)

第二条 児童文学館は、次の事業を行う。

一 児童文学、児童演劇、児童音楽等(以下「児童文学等」という。)に関する図書、記録その他の資料を収集し、及び利用に供すること。

二 児童文学等に関する講座、講演会等を開催すること。

三 児童文学館の施設を児童文学等に関する活動の用に供すること。

四 児童文学等に関する相談を行うこと。

五 児童文学等に関する調査及び研究を行うこと。

六 児童文学等に関する資料及び情報を諸外国と交換すること。

七 前各号に掲げるもののほか、前条の目的を達成するため必要なこと。

ここに掲げられた事業を児童文学館は果たしてこなかったと指摘できますか?
少なくとも上記の事業はきちんと行われてきたはずです。

国際児童文学館の資料は府民の財産というよりも日本国民の財産という性質を持つものであって、府民サービスだけ向上させても意味がないことを知事や府はどう考えているのか。
それを府が負担するのはおかしいというだけならわかりますが、この資料は府の所有物であるというのであれば、国際児童文学館がこれまで果たしてきた役割を図書館に移してもきちんと続けるという保証をまずして貰わなければ、いまよりもはるかにダメな組織になると思うのですが、寄贈者に対しても全く説得力のある説明責任を果たしていないのですから納得がいかないのは当然のことです。

産業遺産資料の廃棄という過失を大阪府はすでに犯していることについてもどうしてこんなことになったのかを今後このようなことが起こらないように検証してしかるべきでしょう。私は大阪国際児童文学館を廃止される前にもっと多くの人が見学してほしいと思います。

産業遺産資料の廃棄問題についてブログでレポートしていた方に国際児童文学館問題に携わっている方がコンタクトを取ったらしく、訪問記が載っていることを教えてもらいました。このような紹介は私のような立場の人が本来すべきなのですが、国際児童文学館には関心がなかった国民の財産の損失を憂いた方の意見として参考としてリンクさせていただきました。
交通が不便とやたらといわれましたが、前にも書いたようにモノレールの運行数が増えてさほど不便ではなくなっていると思うのですがいかがでしょうか。

急げ!!もうすぐ廃館予定!国際児童文学館のバックヤードツアー
http://stroller.blog.eonet.jp/stroller/2009/06/post-4f0a.html