マンガ学に王道なし

このわずかな期間に「マンガ学」をタイトルにした本が相次いで登場しました。

しかし、はてなでアフィリエートを使って紹介している人がほとんどいない、という状況で、しかも黒木掲示板出身の某氏は本の内容もそっちのけで派閥がどうのこうのと何か言っているようですし、『マンガ学入門』の執筆に加わっている永山さんも自分が作った本の宣伝を兼ねた記事とくっつけて載せているし。

しかし二冊ともとりあえず読んでおくにこしたことはありません。それでどんな順番で読んだらいいかをちょっと考えてみました。
まず『マンガ学入門』のなかの「マンガの美学」を最初に、そして次に「海外でのマンガ研究」を読んでよく理解できないところをチェックしておいて常にそこに立ち返ること。次に「歴史研究」、「マンガの読者」、「マンガと教育」を読んで、そのあとに「マンガ研究の歩み」を読んでとりあえずひととおり済ませることにします。
立ち読みでこれだけ読んでこれまでの「マンガ研究の歩み」に何かまだもの足りないと思うようであれば、あなたにはマンガ研究のまだ試みられていない可能性が見えているのかもしれません。研究と批評がいかに異なるのかを抑えるのは大事ですが、大学で本格的に学んでいない人にはなかなかピンとこないものです。私自身、いま暇を見てやっているのは学生になればすぐできるような調査の部分にすぎません。

ほかのところはマンガ研究を行う上での予備知識として興味のある順に読んでよいでしょう。「マンガ表現論」はどちらかといえばあとまわしをお勧めします。つまり最初から「反映論」対「表現論」の図式で論争を吹っかけても「研究」には役に立たないということです。最初に「美学」を持ってきたのはそのためです。

予備知識の部分もコンパクトに抑えてありますが、結局は先行の文献の中で研究として価値の高いものがどれだけ読めるか、貪欲に読んでいくしかないでしょう。もう一冊の「本流!マンガ学」はそのためのガイドとして使えます。今回の記事は、マンガ学に「本流」はないと思うことを示そうとしたものですが、竹内オサム氏がマンガ研究を長い間にわたり強く推進してきたことには敬意を抱いております。図書館に行くと結構置いてある過去の著作で戦前も含めたマンガの予備知識がかなり得られ、とても役に立っているのでした。