近代の日本人はなんで本をたくさん読んでいるのか

若い人が本を読まなくなったなんて思ったことはありませんが、このところ戦前からさらに明治のほうまでさかのぼって日本人はどんな雑誌を読んできたのかというのが気になっています。
自分の学生時代に前田愛の「近代読者の成立」という本を読んで、明治の日本人はどこでも音読をしていたことは知っていましたが、図書館などが音読を禁止したことによって大正時代までに黙読が制度化されていったらしいです。それまでは電車で本を読む人も珍しくなく、制度化が浸透していくことによって公共の場では音読してはいけないという風になっていくわけですね。携帯電話禁止や禁煙の流れとよく似ているのかもしれません。

近代読者の成立 (岩波現代文庫―文芸)

近代読者の成立 (岩波現代文庫―文芸)

雑誌に関して詳しい本はこちら。

ここで紹介されている戦前に部数トップを記録し一世を風靡した雑誌として、「太陽」、「中央公論」、「キング」が紹介されています。あと私はずっと独身で婦人雑誌を読む機会があまりありませんが、婦人雑誌は主婦の友婦人公論など戦前からあった雑誌が戦時中に休刊になったとしても現在もタイトルも変わらずに続いているのはなかなか興味深く感じます。百科事典並になんでもありの「太陽」(これは戦後の平凡社ではなくて明治時代の大出版社だった博文館が出していたもの)のユニークさとか、「キング」(ご存知講談社)などは子供からお年寄りまでが読める雑誌として黙読の習慣がついていない家庭では読み聞かせされたとかが面白く、活動弁士や紙芝居のような日本で特別な発達をしたメディアとの関連がないだろうかなどとふと思うのでした。

紙芝居は楽しいぞ! (岩波ジュニア新書)

紙芝居は楽しいぞ! (岩波ジュニア新書)