銃とクイズ

光文社創業60周年企画の「少年」昭和37年4月号オール復刻BOXがAmazonから届きました。私が生まれる前ですが、少年マンガの黄金時代はいつかを決めるとなると、もしかするとこの頃じゃないかと思います。

巻頭カラーは鉄人28号、次にサスケ、ストップ!にいちゃん、シルバー・クロス(藤子不二雄)、鉄腕アトムという掲載順で、寺田ヒロオ、小沢さとるがこれに続きます。読み物が入って中盤にポテト大将(板井れんたろう)、それから石森章太郎の新連載「少年同盟」があり、後半には前谷惟光桑田次郎堀江卓らがいます。
また付録ですが、巻頭の5作品は途中から別冊付録に続くようになっており、これに九里一平一峰大二わちさんぺいを加えた8作品で8冊の別冊付録になっています。ちなみにわちさんぺいさんが「ナガシマくん」、前谷惟光さんは「ロボット一家」という、主人公がほぼロボット三等兵と変わらないマンガを載せています。Googleで検索した限りではロボット三等兵自体はこれより前に少年クラブで連載されていたらしい。ちなみに検索している途中で夏目房之介さんの新刊でロボット三等兵を採りあげているようですが、これは買ったままどこかに行ってしまって中身は確認していません。

読み物のほうには江戸川乱歩の少年探偵団があり、これだけ役者が揃うと壮観です。他に恐怖もの、SFと戦記ものが載っています。恐怖ものとあえて呼んだのは、吸血鬼の変形ですが宇宙人に体を乗っ取られるというもので、同じ号に載る鉄腕アトムが「宇宙の寄生虫」の巻と、掲載されている作品中ではもっとも怪奇度が高いものになっているのも注目されます。楳図かずおさんが恐怖マンガを銘打つのがおそらくこの頃ですが雑誌に進出するのは昭和40年頃であり、マンガにおける怪奇と恐怖がオタク世代のトラウマとなるまでにはまだ間があります。怪奇もの自体はもっと古くからあり、手塚マンガも考慮すると、あるいは戦争や原爆体験の後遺症のようなものがあるかもしれません。

広告でなんと言っても目立つのがおもちゃのモデルガンの多さです。昭和35年から38年にかけてテレビでアメリカの西部劇が一大ブームになっており、37年頃は毎日のように放映されていたのではと思われます。ちなみにアメリカ製ドラマとしては「ミステリー・ゾーン」(The Twilight Zone)、「コンバット」「ベン・ケーシー」なども放映されていました。
また、復刻版に載っている堀江卓さんの「ガン・キング」は連載の最終回になっていますが、ラジオドラマ化されており、さらに時代をさかのぼると有名な「矢車剣之助」もこの「少年」に長期連載されていて、少年画報に連載された時代劇「天馬天平」とともにテレビドラマ化されるなど看板作家として一世を風靡していました。堀江さんの回想が今回の復刻版にも載っていますが、スピード感を出したのが人気の秘訣だったのではと思われます。

ちなみに自分が小学生の頃(だいたい十年後)には実物に似せたモデルガンではなく、もっと低年齢向けの銀玉鉄砲や水鉄砲、紙詰めの火薬をはじかせる鉄砲のおもちゃは必須アイテムとして駄菓子屋などで売られていて、小学生の男の子はみな半ズボンをはいて拳銃ごっこをしていました。そういうわけで私は戦後旧世代の日本人の最後のほうにいるのではと思われます。私が主に少女マンガ読みをしてきたのは最初に読んだマンガの記憶が、月刊マンガ誌の体裁を最後まで残していた小学館の学習雑誌で今村洋子の最後の作品としてマンガ史に異彩を放つ「ぺちゃこちゃん」とか北島洋子のバレエマンガであることが理由として大きいので、今回の復刻についても実際に読んでいたわけでもないのに懐かしくそして意外に古く感じませんでした。

さて、私は雑誌読みなので欄外に興味が向くのですが、一行クイズというのが載っています。めくった次のページに答えが出ているというものですが、なぞなぞではありません。あらかじめ覚えないと当てずっぽうでしか正解にならない知識を身につけるもので、意外なところで教育的配慮がされているというわけでした。このクイズから想定される対象年齢は小学校高学年から中学生くらいまでではないかと思われます。