キッチュからスーパーフラットへ

私はそれほど美術館によく行くほうではないので、前日に記したように先月に画廊に行ったのですが、画廊という場所に入る機会自体がほとんど無かったりで、石子順造氏が関与していた静岡の「幻触」というグループについても特に下調べもせずに出かけていったりして風変わりな来客としてちょっととまどったりもしたわけですが、私が現代美術に興味を持ったのは高校時代に高松次郎氏の影の絵画を見てこれは面白いと思ったことから現代美術展を時々見に行くようになった、ということがあったのでした。影の絵画というのは文字通りで、「影」がペインティングされている絵であり、その絵を見るときに自分の影もその画面に映ったりしてとてもわかりやすい面白さなわけですが、「幻触」の作家の作品にもそういう視覚のトリックを使った作品があって、一方でもの派の先駆けのような石の作品もあるというということで興味深いものでした。石子順造氏については夏目房之介氏も竹内オサム氏も引用はしているものの単にマンガ表現論の先駆けとしてコメントしているだけで、実際どの程度のことを言っていたのかわからず、美術とマンガがどうリンクしていったのかもう一度読み直してみようとは思っているのですが、実家に石子氏の著作があるはずなのですがまだ見つかりません。
石子氏は1967年に最初のマンガ論でデビューして、その翌年に中原祐介氏とともに「トリックス・アンド・ヴィジョン」展を企画しています。その頃関根伸夫氏が「位相−大地」というシリーズで非常に有名な一連の作品(これも土を掘って円筒形に盛った作品などある意味わかりやすい)を出して、そこから「もの派」という動きが出てきます。一方の石子氏はマンガからキッチュを経て最後には丸石神の調査という風に「美術」から離れていくのですが、石子のペンネームは昭和30年頃から使い出したらしいので、なにか因縁があったのでしょう。
それから時は経ち、90年代の初めくらい?に中原浩大氏がレゴ(おもちゃのブロック)を17万個くらい使った作品を出して、これがまたある意味でさきの関根伸夫氏の「位相−大地」と同様に実に現代美術らしい作品なのですが、この人が海洋堂のフィギュアに着色したものを作品として展示して、そこにランドセル・プロジェクトなどをやっていた村上隆氏が田宮模型を用いた作品などで加わってネオポップと呼ばれる動きにつながっていき、やがてスーパーフラットというコンセプトになる。石子氏と村上氏とでは向かうベクトルは全然違うのですが、中原氏に比べると村上氏の作品はやはり批評性が強く出る傾向があって、一昨年に行われたらしい石子氏を回顧したシンポジウムの記録が出ているのですがそこでも村上隆氏が話題になっていて、背景など比較してみるのは面白いかもしれないと思っています。
参考:
http://www.dnp.co.jp/artscape/exhibition/focus/0402_02.html

たまたま昨日部屋の掃除中にアノーマリーのCD-ROMを見つけたので書いたのですが(今のPCやMacで見られるのかいまのところ不明)、李禹煥展が9月から横浜美術館で開催されるとのことで記しておきます。
http://www.yma.city.yokohama.jp/exhibition/2005/special/03_leeufan/