アニソンってクールだったんじゃない?

自分の同世代的にはプログレの洗礼を受けたものが多く(「ロック・マガジン」をよく立ち読みしたものだった)、私はアメリカンTop40育ちなのでカーペンターズからシカゴ、スティーリー・ダンフリートウッド・マック、ザッパのような感じでだんだんヒット曲から遠ざかっていくのだけど、子どもの頃大きな影響を受けたのはアニメの主題歌である。

鉄腕アトム」の作詞が谷川俊太郎だったり*1あしたのジョー」は寺山修司が作詞しているなんてのも面白いが、やはり作曲家に注目すると、

鉄人28号は作詞、作曲が三木鶏郎、コマーシャルソングの草分けで戦後史的にも非常に重要な人物の一人である(三木鶏郎メドレーはカラオケに入っていて当然であってほしい)。
トムとジェリーの主題歌も日本語版はこの人が手がけていた。

三木鶏郎音楽作品集~トリローソングス~

三木鶏郎音楽作品集~トリローソングス~


モノクロアニメからカラーに移る頃の名作といえばスーパージェッターがあるが(調べてる間に「ハリスの旋風」が「国松くんのお通りだい!」でカラーとしてリメイクされたのを知った。私にはモノクロ版の記憶がない!うちのテレビはたぶんまだ白黒だったけれど、主題歌もちょっと違う!「巨人の星」の裏だったという「あかねちゃん」(みそっかす)は見た記憶があるのだが)、これは山下毅雄ルパン三世ばっかりクローズアップされている気がするが、子供心に印象が強いのが「ジャイアントロボ」。特撮ロボットものはこれが最高傑作だといまだに思うくらい好きだった。後のロボットアニメは実写から逃げた堕落としか思えなかったくらいだった。

アニオタにとっての二大巨匠は菊池俊輔渡辺宙明であろうか。
菊池は「タイガーマスク」「仮面ライダー」など。宙明は「人造人間キカイダー」「マジンガーZ」など。

しかしアニメソングの巨匠を一人選ぶとすれば渡辺岳夫だろう。
巨人の星」「アタックNo.1」「キューティーハニー」「アルプスの少女ハイジ」など名曲がずらりと並ぶ。ちなみに「サインはV」「デビルマン」は三沢郷。

後に歌謡曲で活躍する作家では、「魔法使いサリー」「ひみつのアッコちゃん」を手がけたのが小林亜星。「ガッチャマンの歌」もこの人だ。CMだとレナウンで一世を風靡した。さすが「すきすきソング」の作曲家である(作詞に井上ひさしひょっこりひょうたん島の作者だから別に意外でもなんでもない)。「光速エスパー」の作曲は服部克久だ。

そして筒見京平。歌謡曲としては「ムーンライトヨコハマ」と「魅せられて」が特に傑作だと思うが、アニメ主題歌の「おれは怪物くんだ」「サザエさん」などはやはり傑作だと思う。
サザエさん」はもう国民全体がうんざりするほど聞いているからカラオケで歌おうと思ったりしないだろうが、「陽気なサザーエさん」のメロディラインはあまりにも異彩を放っている。「おれは 怪物くんだ」と歌う出だしのかっこよさもちょっと比べるものが見つからない。
音楽理論を知らない私がたとえばaikoの作曲センスをすごいと思う時、決してそれが洋楽っぽいからではなく、こうした幼少の頃覚えたアニメ主題歌の名曲の記憶が甦っているのかもしれない。

アニメソングがつまらなくなったのはガンダムくらいからだと思う(渡辺岳夫なのだが正直できはよくないと思う)。銀河鉄道999にはもろに違和感を持った。うる星やつらあたりで時代の変化は決定的になり、タッチでとどめを刺されたようである(タッチの主題歌が嫌いだったわけではない)。ヤマトもあまりよくない。宮崎アニメはもう普通のサントラだし。
音大を出た劇伴作曲家だからよかった、というのとも少し違う。ギャートルズかまやつひろしが手がけているが、園山俊二自ら作詞したオープニングテーマは私にとってのもっともお気に入りな一曲であるのだ。

おたくにおける世代差とはなんなのだろう。ここに書いたのはあくまでも私個人の好みなので、なんとも言えないが、とにかく昔のアニソンというのはかっこいい音楽だった(いま聴いてもそう)と思うのである。

テレビまんが主題歌のあゆみ

テレビまんが主題歌のあゆみ

21世紀に遺したいアニメソング大全 ミレニアムボックス

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*1:鉄腕アトムが放映される一年前に、11PMゲバゲバ90分のアニメで知られる久里洋二谷川俊太郎の詩を用いた「二匹のサンマ」という短編を作っていたことを知った。久里が手塚に与えたかもしれない影響は思いのほか大きい可能性がある