現実と虚構の区別がつかないのは誰か

「死神くん」のリメイクについては検索してもらうとして、もともと4本指だったのが5本に描き直されているのですが、なんでこんな規制をしなければならないんでしょうかね。
80年代のマンガは全体としてみた時に大友克洋などの影響もあってビジュアルのリアリティを追求する方向に向かって、物語作りがうまくても絵が下手だとマンガ家になれないような窮屈さからマンガの才能ある人が活字表現に向かう面はやはりあったのではと思われます。
大友克洋の時代はスター・ウォーズの時代でもあって、虚構世界の中にリアルな質感を与えようとする欲望が急速に拡大していく時期で、その背景にはコンピュータの発展があったと思います。スター・ウォーズ以降皮肉にもSFは衰退していくのですが、それはSFというジャンルでサイエンスの担っていた部分がビジュアルのほうに吸収されていったせいなのではないかと今ふと思いました。ヴィジュアルのリアリティなんてサイエンスとは全く関係のないものなのに勘違いしているふしがあるのではないか。私は虚構の中の人間ならざる存在に対して指の数を5本にしなければならないというのは奇形に対する差別表現だから、という理屈にはかなり無理があると思わざるを得ません。むしろそのような規制をよしとするところに、現実と虚構を混同するという倒錯があるのだと私には思えます。付け加えれば、普通に考えられてるのとは逆に、私の直観としてヴィジュアルのリアリティが増大すればするほど死は希薄化されてしまうように思えてなりません。