ここまでのブログのポニョ評を軽く書き留めておこうかな

見に行ってすぐ「崖の上のポニョは傑作でした」というエントリを書いてから、ちょこちょこと言及したりしましたが、アニメを見た後でいろいろ考えたいというタイプにとってそれなりに役に立った感じの記事をピックアップしてみます。

http://d.hatena.ne.jp/kebabtaro/20080729/p1
マンガ版ナウシカで提示された問題からのアプローチ。え、セカイ系なの?という驚きがもれる。

http://d.hatena.ne.jp/throwS/20080731#1217512769
ものすごくわかりやすいオーソドックスな神仙結婚譚だと思ったというもの。浦島太郎やかぐや姫のようなおとぎ話になぞらえるとしっくりくるという見方。

http://d.hatena.ne.jp/mamiamamiya/20080731
意味やテーマなんかクソ食らえとばかりに圧倒的なイメージが大波のようにそれらを押し流していく、そういう感じ、その他いろいろと書かれているけれど、ギャルの会話として書かれたところが味わい深い。

ギャルB「ウケる〜。でもさ、何かちがくない? 従来のジブリ路線とさ〜。いつもは何か深いテーマがあんじゃん。自然とか。今回はあれだよね、珍しく愛に行ったよね」
ギャルA「行ったね。でも、アタシは好きだよ」
ギャルB「でも前のジブリが好きな人は拒否反応とか示しそうじゃね?」
ギャルA「かもね〜」

http://d.hatena.ne.jp/guri_2/20080813/1218613327
はてなブクマ一番人気。自分が子どもだった頃を思い出して思わず泣いたという結構ストレートに素直な感想と思うけど、わざわざdisろうとする人がいるんだねえ。2000以上のブックマークがついたエントリを過去に書いているからだろう(笑)

http://d.hatena.ne.jp/gginc/20080731/1217496366
テヅカ・イズ・デッド」のキャラ/キャラクター論と哲学用語の「中間存在」をぶつけて読み解こうとする意欲的な試み。この周辺の議論はどこかでそれなりに盛り上がっている気配だけど自分は神話とかどうでもいいやという気分なので特に追ってません。

http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20080815/1218743001
「最高じゃん」と一言で言い切ることが、批評的な意味を持つような作品だと思った、とマンガを本格的に研究して大学で教えている人が言い切ってくれたところが良かったですね。
「リアリティ」を「現前性」と「もっともらしさ」の二層に分けてみるキャラ/キャラクター論を展開する立場にとって格好な素材でもあるので、熱いハートで分析して見せてくれています。大サービスと言っていいくらい書いていますね。


で、否定的に論じている文章は入れてませんけど、非難はあっても注目すべき論はなかったような気がしますし、実際に見るかどうかを判断したいという目的であれば、自分が気になっている批評家やブロガーの書く文章以外で否定的な見出しのついた評をわざわざ読もうとするってことはそもそもありえないでしょう?痛烈な批判であってもそれを確かめるためには見に行って自分で確かめるしかないのだし、進んで見に行くつもりがなければどうせそのうちテレビで放映されるんですからほうっておけばいいだけの話です。あ、一度は見たという人に向けて書いていたんだっけ。でも見ようか迷っている人向けでもいいかと考え直しました。


かくいう私ですがナウシカの劇場版を見に行ったとき、え、これで終わりと思ってちょっと唖然としていたらエンドロールまで終わって拍手が巻き起こってすごく腹を立てたという過去があります。何だか大昔ですね。ナウシカに怒った自分がなぜポニョを絶賛するのかを本当は書くべきなのでしょうけど、ナウシカの問題を克服した、というようなことは別になくて、宮崎駿がもはや描き得ないだろうと思われたあっけらかんとした肯定に果敢に挑戦している感じですよ。渾身の力で漫画映画の原点に戻ろうという相当しんどいことで責任をとろうとしている。
そんなの手遅れだろうといっても、いま5歳の子どもに宮崎の年齢の大人が直接手取り足取り何かを教えるってことは機会としてもほとんどないわけで、それでもいま育っている子どもに素直に未来を託そうということはもう少し若い自分くらいの歳でも考えることなんでね、別にそれがジブリである必要ももちろんないわけですが、ジブリというブランドが今回は必要ないってくらい目の前の映像を楽しんで受け入れられたってことに尽きるかな。なんで今回見に行こうと思ったのかもよく覚えていないんですが、とりとめが無くなってきたのでいつものごとくあいまいに思わせぶりのままここで書き終えることにします。

おまけ

なんかほかにやるべきことがいろいろあるのに面倒くさいことをしちゃっているなと思って適当に書き終えた途端に大物が一石を投じてくれました。
http://d.hatena.ne.jp/ykurihara/20080816#1218861405

いや、これは実に見事にネタ化してますね。これぞライター魂ってやつですね。

さらにどうでもいいおまけ

鉄道で移動中にちょっと思い立って携帯からコメント欄に追加したんですが、
「議論が出てくるんじゃないんではないですかねえ。」っておかしな文になってしまって、
皮肉っぽく書こうとしてから、これは特定の個人への当てこすりのつもりではなかったので
さすがにちょっとためらったせいなのですが、コメントは編集できないみたいなんで、
「議論が出てくるっていうものじゃないんですかねえ。」くらいのものです。

ポニョネタは打ち止めのつもりでしたがどうしてもひとつだけ好きなのがあって、

http://nomano.shiwaza.com/tnoma/blog/archives/006608.html
崖の上のポニョ」は宮崎駿が息子・宮崎吾朗にあてた遺言状

本来の意図はどうであれ「吾朗みたいな子をつくらないために」という言葉が流通しちゃってるんで
たぶん宮崎駿ならば文字通りこう言ったんだろうな、と思うのですが、
小金井丸をスタジオジブリに見立ててそこから展開していく仮説にはかなり納得させられるんですが、
これは読み込みをきちんとやっているから書ける。
そしてまとめの言葉にも芸があって、軽く読み終えられて素晴らしい。
結論が○か×かとかよりも、読んで思わずひざをたたくかってところに批評の価値があったりするので
こういうスタイルの批評を書きたいものです。

さらにしつこくおまけ
ただ、どうも今回男のキャラクターは全員宮崎駿自身の分身っぽい気がするんですよね。それでグランマンマーレって変に浮いていますけど、
彼女はあの偉大なるアーシ(略)婆さんだったりしてね。ちょっとうまく冗談にできないや(笑)