帰郷

週末に松山で日本マンガ学会の第8回大会が開かれましたが、私は愛媛の生まれで、大阪で育った母の故郷でもあり、松山にも親戚が住んでいるので里帰りをかねて見に行ってきました。何しろ生まれた場所とはいえ育った地ではなく十年に一度しか帰ったことがなく、それは母ですら自分が生まれて以後同じようなものなので(なに考えてんだ親父)、この機会に母を故郷に連れて行かないと高齢のきょうだいと会う機会なんか作れないぜ、という事情がありました。自分の故郷の記憶も薄いのでこの機会に焼き付けておこうと月曜日に一日休みをもらって地元なのに行ったことのない名所をちょっと見てきました。
まず驚いたのは地元のメディアがこの大会のニュースを流していて当地の親戚も知っていたということ。初日の会場には報道も入り会場は満席。これは予想外でしたが、もしかすると愛媛という近代文学にゆかりの深い土地が持っている懐の深さなのかもしれません。文学関連の名所に行く余裕はありませんでしたが、地元の人の雰囲気から感じたのか、私にとって魅力あるその土地の文化を大事にしている感のある地方都市としては熊本に似ていると感じました(大都市以外はなかなか行くきっかけがないのであくまでも印象ですが、新潟に行った時に強く感じたカルチャーショックはありませんでした)。

途中で手塚治虫の生誕80周年を記念した一連の発表とは別の部屋で行われていた愛媛県生まれの柳瀬正夢についての発表を見に行っていたので、手塚治虫に関する全部の発表は見られませんでしたが、初日の後半ジャクリーヌ・ベルント氏が司会を務めたラウンド・テーブルは、今回の催しに興味を持って来ていただいた学生の方々や一般参加者に向けてマンガの研究の現場を垣間見させるものとなったかなと思います。もう少し時間を多めに割り振っていたらよかったのにとは思いましたが、ベルント氏が今回の大会に積極的に関わって若い気鋭の研究者が研究していることを紹介しただけでも意義はあったと思います。
ちょっと面白そうだから見てみようと思った人には二日目の内容のほうがイベントとしては面白かったでしょう。けっこうラフな感じで進められたので、こちらをオープニングに持ってきたほうが一般参加者は興味は持ってくれたのではないかと感じました、それから書籍の展示販売も行われていましたがそちらの会場にあまり人が来なかったといった話も聞こえました。


2日目の大会終了後JRに乗って明るいうちに海岸沿いに下灘を通って長浜へ向かいました。あまり天気が良くなかったのですが夕方には多少良くなったので敢行。現在の予讃線は特急は山側から内子を経由するのが本線なので幼い頃里帰りのたびに鮮烈に記憶に残っているこの区間をとにかくこの機会にもう一度通っておかなくてはと思いましたが、残念なことはかつて線路の脇は直接海だったのが、埋め立てられて道路が出来てしまったこと。昔の記憶を呼び起こして視覚的に再現することはやはりかないませんでしたが、故郷に帰ってきたなあと感慨もひとしおでした。



大会2日目の朝に道後温泉に行くことも出来たので、日も暮れて夜に松山に戻ってからは、別行動の母と合流する前に松山市駅のほうに向かったのですが、ちょっと予定が狂い街を歩くのは中断。月曜日は親戚の元にいましたが物心がつく前以来松山城に行ったことがないのでちょっと迷ったあとで大急ぎで見に行ってきました。ロープウェイとリフトがあり、天守閣まで登るのに運動不足を痛感しましたが、松山市街を望んで長年のつかえが取れた感じがしました。
しかし一番来て良かったのはじゃこ天が東京のスーパーに売っているものやうどんの店にあるトッピングよりも格段においしかったことでしたね。

一つ大事なことを書き忘れていましたが、今回の大会で大阪府立国際児童文学館の問題について知ってもらい存続を求めるための冊子が配られています。あの場所は子どもたちの憩いの場としても本当にいいところだと行ってみたら感じてもらえると思いますよ。