堀江卓が亡くなっていた

先週の土曜日に京都国際マンガミュージアム中野晴行氏の「マンガと産業」の講演があるということで、本業でテンパッている私は息抜きのため見に行きました。あまりおおっぴらに書けないような話題もあってここであまり書くつもりはないのですが、かつて別のブログでテレビアニメは従来のアニメーションに対する「破壊的イノベーション」ではなかったのではないかとか、マンガには結び付けて話していませんが「コモディティ化」がもたらす問題について自分なりにお勉強したところをマンガ産業とも結びつけて考えることができるのではないかということは考えつつ、講演を聴いておりました。現状としては雑誌の不振が続いていることと携帯コンテンツの伸びが著しいということで、このあたりは読者としての感触がデータでも明らかだということがわかりました。私がひとつ質問したかったのは携帯コンテンツでオリジナル作品がどの程度読まれているか、それから携帯マンガが作品単位でなく携帯雑誌というような複数作品スタイルで読まれているのかどうかということでしたが、残念ながら質問の機会を逸しました。雑誌が不振では新しい才能が生まれてこないという危機感は私自身もだいたい同じ考えでありますが(同人誌コミュニティが肩代わりするところはないとはいいませんが、長編が大ヒットして莫大な収益を上げるという図式は週刊誌によってもたらされたものでしたのでしょう。ただし、昨今の「NANA」や「のだめカンタービレ」の大ヒットはそこに掲載誌がどれほどの役割を果たしたのかを再考すべき手がかりとして産業論的に研究すべき例ではないかとも思います)、携帯マンガがいかにいまのマンガ産業の収益を伸ばしていても、それが作家を育てる役割を果たしていないのであれば、携帯の画面で見せる技術がどんなに革新的に進歩しようとも、コンビニ専用コミックと違いはないのではないかという疑問はぬぐえませんでした。そこを突っ込むほどマンガ産業の事情を知っているわけでもないのでとりあえず聞くにとどめることになりましたが、たとえば日本のお家芸であった家電業界がグローバリゼーションの波の中で厳しい状況に置かれているような最近の状況とまったく無縁であるともいえないと思ったりもしていました。
ところでこの日、堀江卓が亡くなられていたという話を聞いて驚いたのですが、訃報はマスメディアに流れたのでしょうか。今年の2月のようですが、かつて少年誌で一世を風靡した有名な作家がこれほどに忘れ去られているのかと寂しい気持ちになりました。まったく世代が違いますがすぎ恵美子さんが亡くなられたのも同じ2月でした。30年間のほとんどを雑誌の看板作家として活躍していたと思いますがコミックスの累計部数が1800万部に及ぶとのこと。最近雑誌をきちんと見ていなかったので1年を超える療養期間については今調べました。忘れないうちにきちんとその業績を評価すべきですが、いまはただご冥福をお祈りします。
京都の国際マンガミュージアムにいったのは2度目ですが、マンガ喫茶と明らかに違うのは親子連れなど客層に現れています。図書館に近いスタイルはこれからのマンガ施設にとりわけ求められるものでしょう。ちなみに私は親が子供の学力を向上させたいと思うならば、幼い頃に絵本とマンガを読ませるべきだとかなり本気で思っていますけど。