ちょっと一人コミックバトンなどしてみたい[lacoアーカイブズ]

勝手に拾ってこようかと思ったけれど一人バトンということにしてコミックの趣味とか書いてみましょうか。

■本棚に入っている漫画単行本の冊数
棚に入っているのはせいぜい300冊くらいかも。段ボールや収納を入れれば1500冊位?短編しか買わないできたので最近は長編を古本でまとめ買いしたりもしたのですがやはり山のようにある本の整理が先。

■今面白い漫画
短編読みなので今のマンガはなかなか読んでないんですが、コミティアあすなひろし選集のたかはし氏を見舞いに行ったら隣が楽書館さんで(向こう隣がみなもと太郎さん)、昔から大ファンだった青木俊直氏の本をちょっと旧作ながら即購入いたしました。
たかはし氏がその日たまたま谷川史子さんと出会って、こうの史代さんの「長い道」はちょっと凄いという話があったと聞いたので早速買いましたが、私の好みにばっちりはまりました。戦争テーマがなくてもこういうのが描ける人はやはり偉いです。

■最後に買った漫画
というわけで、こうの史代さんの「長い道」

■よく読む又は、特別な思い入れのある5つの漫画

もちづきゆきみ「泣いた紅鬼」(1987くらい)
80年代マーガレットコミックスの新人デビュー作の一つの頂点、と言いたいくらいですが当時のマーガレットコミックスを全部読んだわけではないので、でもこれはくらもちふさこの実験と並行的な作品群の一つでしょう。銀賞受賞作家の本領が存分に発揮されたというか、表題作のラスト2ページで予想を超えたテーマにぱーっと広がるところや、表題作と収録作の「ミルキーハウス」が同じようにエンディングにある仕掛けを持ってそれが響き会うところの巧みさなど、まったく見事でした。

芳成かなこ「赤い鳥ことり」(1986くらい)
「泣いた紅鬼」に先行するデビューコミックスで、デビュー作から表題作までが終いから冒頭まできちんと初出順に並んでいます。表題作は、あきの香奈の「教室のはじっこ」をおそらく下敷きとして、主人公を助ける男子がいない女子校で友だち仲間に入れない女の子の話にリメイクしていますが、当時いじめがマスコミに採りあげられていた時に、いわゆるいじめではなく孤立してしまった少女のちょっとした登校拒否から帰還までを淡々と描いたこの作品は異彩を放っていました。
その後もあきの作品から流用したりしますが、やがて先行作品からのエピソードの全面的な流用によって一見何の変哲もない地味な一編の作品を新たに作り出すなど、パクリと呼ばれそうなレベルを完全に超えたすごい作品を出して、私のマンガの読み方の変化に多大な影響を与えました。くらもち風と岩館風の手法を独特の形で継承して、あきの香奈と後の冬野さほの橋渡しをした位置にあると思えます。

矢野美穂子「夜の海」(1985くらい)
りぼんの新人作家デビュー集に載っているんですが、親しみやすい絵柄とシュールなギャグでセンスの良さが光っておりました。その後りぼんオリジナルに描いたギャグものも面白かった。3作で姿を消してしまいましたが改名して絵柄も変えて描いていることを祈ります。

倉多江美「彼誰時」(1982)
これは橋本治氏が絶賛した「上を見れば雲 下を見れば霧」の姉妹編に位置づけていました。橋本氏がマンガ評論から離れたのちも倉多江美は一連の湘南〜小田急沿線ものをギャルズライフなどに描いており、たとえば紡木たくの登場を準備したのかもしれないと思います。本作は「ミトの窓」所載で、友人の死と、離婚して別れた妻の元から長男を預かって夏の日々を過ごすという、女性マンガ家でここまで読者を男に感情移入させられる作家はめずらしいのではないかと思うくらいの異色作です。
かなり後になって作者は「競馬場へ行こう!」を書きますが、私はこの作品を勝手に「上を見れば雲 下を見れば霧」「彼誰時」と続いた少年三部作の完結編に決めて、一時は入院明けのリハビリに府中競馬場に通ったりしましたが(当時は外国産のタイキシャトルエルコンドルパサーが化け物でした。また大島弓子を読んで吉祥寺のテレホンクラブに行ってみたことがある)、ギャンブルが苦手で競馬の事情を知るほどつまらなくなってしまったので最近はまるで見に行っておりません。

橋本みつるパーフェクト・ストレンジャー」(2000くらい)
LaLaで描いていましたが、もっとわかりやすい話を書くようにと言われて、相性の合う担当者が少なかったのか悩んでいたみたいですが、「きみとぼく」に移籍してコミックスも出て、読み切りから中編まで描くようになってこれが代表作といえましょうか。休刊とともに描かなくなってしまいとても残念。
似た傾向の作家としてはガロの津野裕子さんあたりでしょうか。こうしてみると、少女マンガの一番先鋭的な表現者が描けるマイナー少女マンガ雑誌がいまは明らかに足りないと思います(以前はガロがあった。アフタヌーンだとちょっとなあ)。魚喃キリコさんあたりがちょうどボーダーライン上くらいで、日常にファンタジーを紛れ込ませるタイプの作家は描きづらいんではないしょうか。

倉多江美を除いて本当にマイナーになってしまった感じですが、次点で岡崎京子さんの「万事快調」。これは本当に傑作だと思います。団地っ子な私は「ラブ・マスターX」にも惹かれますね。男性作家縛りにしたほうがよかったか。