橋下府知事の不思議な発言

大阪府立国際児童文学館の問題についてマンガと児童文化の研究者である宮本大人さんが状況をレポートしております(お忙しいのにお疲れ様です)。私も報道をチェックしていかなくてはと思うのですが、市長との会談のなかで橋下知事の発言のなかに知事の言葉としてはどうなのかというものがいろいろとあって、これは困ったなという感想を抱きました。

朝日新聞、2008年5月16日
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000805160002

橋下 残ったものこそ文化だとぼくは思う。府民が署名を集めているが、本当に残したいなら1人千円でも出すべきだ。府民が金を払ったうえで行政がサポートするならわかるが、初めから行政が金をつっこんで守っていこうというのはどうか。

あのー、署名を集めているのは、赤字になっているからと拙速な廃止をせずに、無駄使いになっているお金がどういうところにあってそれをいかに改善していくかということをもっとよく話し合いをしてから決めても遅くはないでしょう、という意思表示をすることだと私は思っているのですけど。
それからこういう問題が今起こっているのだということを知ってもらうことが大事だと思っているのです。

当の府民に対して署名をするくらいなら金を出すべきだと言うのは、府民のためにあるべき行政の本来の目的からはかなりズレた発言と思われるのではないでしょうか?府民に金銭的な負担をしてほしいと言うのなら、そのお金がどのように大阪の状況を改善していけるのかというビジョンを府民にきちんと説明する必要があるでしょう。

産経新聞「橋下日記」(15日)
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/080515/lcl0805152311003-n1.htm

(吹田市の)阪口善雄市長に「知事がつくった舞台で芝居をさせられている。知事は主役兼監督だ」と言われ、苦笑い。同市内の府立国際児童文学館について、「蔵書を他の図書館に移した場合、市で建物を活用してもらえますか」と質問。

ちょっと困惑してしまいますが、ハコモノ行政批判どころかまず中身より入れ物ありきというふうに聞こえる奇妙な発言と聞こえてしまいます。
中身を抜いたカラの建物には価値がありません。中身を入れ替えると言う前提で知事の考える「有効活用」とはどういうものなのか、市長に頼む前にご本人はなにか考えがあるのでしょうか。
有効活用というのは建物だけのものではありません。たとえば働く人材の有効活用が本当にうまくいっていれば働く人のモチベーションがあがって働き甲斐のある仕事に満足して生活の質も上がっていくのです。しかしやみくもなコスト削減だけを掲げて現場を疲弊させてしまえばまったく逆の動きになってしまうのです。


大阪府立国際児童文学館についての私の過去のエントリ(大阪国際児童文学館について知ってほしいこと http://d.hatena.ne.jp/lacopen/20080329 および 大阪府改革PTに物申す http://d.hatena.ne.jp/lacopen/20080412)でも書きましたが、国際児童文学館の使命とその成果の積み重ねは日本全国の自治体の図書館に数多くの貢献をしており、そこから学校教育の質を高める源泉にもなっており、全国の子どもを育てる親たちもその恩恵を受けているのです。