国際児童文学館問題−他に学ぶことはないか

大阪府立国際児童文学館の問題について府立図書館に統合しろという意見のサイトもちょっと見てきたのですけど、建設的な議論をするための土台そのものがないところを相手にするのは不毛ですね。

国際子ども図書館と神奈川県立近代文学館のページとそこにある資料を読んでおくといいでしょう。自分もきちんと見ていないのでなんですが。(今はためにするような議論に時間をとられたくない)

単純に来館者を増やすのであれば自然文化園の入園料を来館の際にキャッシュバックすれば増えるんじゃないでしょうか(笑)それよりも茨木市またはJR茨木の駅からバスに乗ったほうがアクセスは楽だとは思います。ただ来館者を単純に増やしてもメリットにはならないですし。しかし私のようなアカデミズムに属していない者でも簡単な手続きで閲覧ができるのです。東京から旅費がかかりますが調査内容にもよりますが大まかであれば1日20冊くらい調査できる。調査結果が何かの役に立ってご恩返しができればと思います。

国際児童文学館は誰のための施設なのか、については、まずは国会図書館から分かれた上野の国際子ども図書館の資料を見ていただきたいですが(当然子どものためが一番ですがそれだけではない)、親子連れにはもっと利用してもらいたいし、また少子化の流れの中で、大人もターゲットにせざるを得ない状況もあります。
しかし、上野公園を抜けた場所にある国際子ども図書館と同様に、子どもが児童書と関係ない利用者に邪魔されないような環境は確保してほしいのですね。親子連れが集う公園のそばというのは立地としてむしろ適しているのですが、公園経由だと入園料の問題とかゲートをくぐって外に出るには遠回りになるとか改善の余地があるのが残念です。

神奈川近代文学館を見て感じたのは、ここの閲覧室は無料で使用できるのですが、催し物が多くこちらで参加費をとっているのです。閲覧のための本館のほかに隣接する展示館があって、ここで有料で講演をしたり展示を行っています。国際児童文学館に所蔵されている資料のポテンシャルからいえば、展示館が増設できればそのほうがはるかに資料が有効に活用できると思います。
いずれにしても普通の図書館とは違う資料館及び情報センターとしての役割を訴えてもそれをはなっから無視して話を進める人とでは話が平行線をたどるばかりでしょう。
あと児童文学館にはマンガ資料も多いですが、決して現府知事が隠し撮り報道の際に言ったようなマンガ図書館ではないということもきちんと認識してほしいところです。マンガを開架で読みたければ京都国際マンガミュージアムに行けばいいのです。

余談ですが、最近マンガ関連のイベントに行くたびコレクターとか言われるのには辟易しております。マンガマニアとは距離をとりたい気分もあって、マンガの商業性からも距離をとりたくて、ここ一年ほどあすなひろしプロジェクトからも離れています。

といいつつマンガ関連書の紹介(に加えてピーター・ブレグヴァドについて)

線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート

線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート

フランスの気鋭の研究者によるマンガ研究書。パラパラとめくって真っ先に興味を惹いたのは白木卓の漫画が引用されていたことですね。谷岡ヤスジとほぼ同じ時期に少年マガジンにも起用されたことがあるみたいなのですが、谷岡ヤスジの知名度と比べてものの見事に忘れ去られています。青年誌にも進出せず若い読者に名前が知られなかったこの作家を採りあげているというのがちょっと驚きでした。白木の引用された漫画が徹底してサラリーマン向けであるのを見ると、谷岡ヤスジはマガジンでの連載にあたり子ども向けを意識して赤塚不二夫をかなり研究したんじゃないかと思えなくもないですね。
さて、フランス、顔とくればやっぱりレヴィナスが冒頭に出てきました。フランス語の翻訳なので読むにはある程度他の翻訳書を読んでいるなどちょっと慣れがいります。人名については日本向けに巻末の略伝が拡張されています。
意外にもピーター・ブレグヴァドの名前を見つけて、あの「スラップ・ハッピー」のミュージシャン?と思ったら巻末の略伝にその旨ありで大当たりでした(!)しかし漫画家として活躍していたのは知りませんでした。
カサブランカ・ムーン

カサブランカ・ムーン

Kew. Rhone

Kew. Rhone

アンディ・パートリッジとの共演盤なんてものがあるとは知りませんでしたが、アンディ・パートリッジがプロデュースしたアルバムがけっこう出ているよう。実はいかにもな組み合わせとも思えます。興味のある方はPeter BlegvadがつづりなのでAmazonを見てください。
ORPHEUS,THE LOW DOWN

ORPHEUS,THE LOW DOWN

漫画は「Leviathan」という題で90年代に評判を呼んだものらしいです。この本の中でも重要な位置を占める作品になっていて、最後のほうに図版が抜粋されています。
The Book of Leviathan

The Book of Leviathan

続いて日本のほうから。現役マンガ家によるネームを中心としたマンガの創り方です。

マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり

マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり

500ページと分厚く文章量も半端じゃありません。ほぼ4千円。確かにマンガ論を読んでマンガが描けるわけじゃないのですが、ここまで文章での説明にこだわるのがかえって面白い。気合を入れないと読み通せないかもしれません。