追悼:石井桃子さん

一昨日、昨日と青春18きっぷの残りを使い切るため東京から関西に遠征に行って、今日仕事を終えて実家に帰ってたまたま新聞を見たら読書欄で記事を見つけました。ネットでは見つけられませんでしたね。はてなじゃだめかあ。2日に老衰のため101歳で亡くなられたとのこと。
石井さんといえば「ノンちゃん雲に乗る」や「くまのプーさん」がよく知られていますが、両方とも今まできちんと読んでいません。私にとってはディック・ブルーナの「うさこちゃん」で有名といいますか、明治40年生まれで桃子という名前がちょっと珍しいと感じたのでしょうか、とにかく児童文化に多大な業績を残し、戦後文化を代表する巨人がまた一人お亡くなられ明治もずいぶん遠くなってしまいましたね。
月光仮面」の川内康範氏が昨日亡くなられた記事も読みました。こちらは88歳での往生ということですが、70年代にレインボーマンとかヒーローものをテレビでやっていましたね。

石井さんは自分が子どもの頃すでにビッグネームでしたが、検索してみたら作家、翻訳家であるとともに戦前から戦後にかけて文藝春秋、新潮社、岩波書店の編集者を務めたりで、経歴とか知らなかったことがずいぶん多く、いまさらながら勉強になりました。昨年ユリイカ石井桃子特集号が出たのは百歳のお祝いもあったのですね。購入したのに読む時間を取れなかったのでとりあえず読まなくては。一番興味があったのは80歳のときに大人向けに書いた、昭和ひと桁の頃が舞台の自伝的作品「幻の朱い実」なのですが、「ノンちゃん雲に乗る」もこの機会に読んでみようと思います。
ユリイカの特集のほうにでしたか、戦後すぐ出版された「ノンちゃん雲に乗る」のいろいろな出版社からの異本の写真が載っていて、ベストセラーになったのは光文社版。ロングセラーとなって新書版のカッパブックスにもなっているようです。ベストセラーになる前の異本で松本かつぢが描いたような表紙もあったのですが、と思ったら昨年の7月8日付でここのブログに書いてありました。なんかあわただしい中半年前のことなどすっかり忘れております。
ちなみに光文社のページを見に行ったら、沿革に、昭和20年10月1日創立とあって、まさに戦後文化の担い手として登場した出版社だったんだなと感じました。「ノンちゃん雲に乗る」が書かれたのは戦時中の昭和19年、最初に出版されたのは昭和22年、昭和26年に文部大臣賞を受賞して光文社から出版されたのが

子どもの頃はカッパの本といえば松本清張の一連の推理小説の記憶が非常に強く、角川が横溝正史などの本格推理小説を文庫本で出すのが小学生の途中でした。小学館の学習雑誌を六年生まで読み終えて、しかし当時は少年マンガに手を出すのははばかられて、中学生の頃一時マンガ離れしていた時期には翻訳ミステリばかり読んでいた時期がありました。「くまのプーさん」のA.A.ミルンが著した唯一の推理小説「赤い館の秘密」は古典として知られています。私は時たま推理小説のトリックを見破ってしまうんでもう四六時中創元推理文庫を読みふけっている時期とかありましたが、当時の記憶をたどっていたらテレビアニメの「赤毛のアン」の再放送に夢中になって毎日長編の感想を日記に書いていたことなど思い出しました。日記を習慣にしていたのは小学生の頃に臨時担任の先生から毎日書いてみなさいと言われて書いたときと中学の一時期しかないのに、日記書くだけで一日つぶしたのは思い出しても我ながら何を考えてるんだかすげえや、とすでに話題が大幅に逸れておりますけれども。
うさこちゃん」は新訳ではアメリカ版の名前である「ミッフィー」になったりしていますが、もともとのオランダ語ではNijntjeと書かれていて、ウィキペディア日本版では、「ナインチェ・プラウス」として項目が載っております(福音館書店のページではネインチェと記載)。わたしは「うさこちゃん」側の世代になるんですねえ。
ところが石井さんは1971年より「ピーターラビット」シリーズの翻訳を手がけていて、これが面白いのはウィキペディア日本版によると、日本では石井さんが生まれる一年前の年の明治39年にすでに翻訳があって、石井さん以前にはピーターうさぎと訳されていたのが、1971年に実写映画化がされたそうで、この映画が日本でいつ公開されたのは1978年というページを見つけたので、ピーターラビットという名前を定着させたのは石井さんの可能性がありそうですね。

参考:
ウィキペディアの「ピーターラビット」経由で、「ピーターラビット」翻訳、明治39年の日本語版が最古、本よみうり堂


松岡正剛の千夜千冊『ノンちゃん雲に乗る』石井桃子
戦前より大衆児童文学とは何かという論戦があったことにちょっと触れていたり、大阪府立国際児童文学館の1984年の開館記念で「はばたけ児童文学・石井桃子の世界から」という展示を見たという記載もある。

ノンちゃん雲に乗る

ノンちゃん雲に乗る

クマのプーさん (岩波少年文庫 (008))

クマのプーさん (岩波少年文庫 (008))

鉄腕アトム5歳の誕生日

そういえば光文社の名前が出たところで、雑誌「少年」に連載されていた「鉄腕アトム」がGoogle日本版のトップページに登場していたので、例によって検索からウィキペディアを参照したら、今日がアトムが生まれた日からちょうど5年目になるとのことです。21世紀がどんな世界になるのか想像もつかず、そのころにはもう40歳になっているんだなと思っていた若い頃も、人工知能の研究がしたいなどと思いながらアトムは無理だろうとか思ってはいましたけれど、なんと言えばいいのか、こういう世界になる(というよりこれからもどう変わるのかも予測が難しい)のはやはり予想できませんでした。
光文社についてウィキペディアの項目が戦後出版史としてまた興味深いです。

鉄腕アトム HAPPY BIRTHDAY BOX ([バラエティ])

鉄腕アトム HAPPY BIRTHDAY BOX ([バラエティ])